東京地方裁判所 昭和25年(ワ)583号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
(事實)
原告は火災による損害を補償して貰う目的で「会員相互の扶助救済、火災の防止、被災会員に対し災害補償を行うこと」を目的とする被告共済会の会員となつたところ、居宅附近に発生した火災のため類焼し全焼の憂目にあつたので、原告は被告共済会に対し七口分の補償金三十五万円の支払を求めると主張した。
被告共済会は原告主張の請求原因事実を認めたが、原告は三十日以上も会費の納入を怠つたため約款第十六条により会員たる資格を喪つておつたから被告共済会に補償金の支払義務がないと抗争した。
註 約款第十六条第三号には「会費の払込を三日以上怠つた場合は会員の資格を喪失する」という記載がある。
この抗弁に対し、原告は被告主張の約款の記載の存することは認めるが右約款は例文に過ぎず、原被告間の契約の内容をなすものではないと争つた。他の争点省略。
(判斷)
原告敗訴。
判決は当事者間に争のない事実並に証拠によつて原告が会費の納入を三日以上怠つた事実を認定し、被告の抗弁を採用し、原告の請求を棄却した。原告が約款第十六条第三号は例文であると抗争したのに対し、右約款の性貭、内容からその例文に非ることを説示して原告の主張を排斥した。曰く。
「原告は前記約款第十六条第三号は例文であると主張するけれども、保險会社若くは被告のように会員の損害填補を目的とする法人は多数の相手方と契約を締結する関係上、その締結する各個の契約に付、各別にこれを定めることなく、一般に定型的な普通約款に従い契約するのを例とするのは当裁判所に顕著な事実であつて、契約当事者たる当該法人に普通約款の定がある場合には当事者が特段の約定をなさない限り、この普通約款によつて契約をなしたものと解するを相当とするところ、原告の全立証によるも原被告が特段の約定をなしたとの事実を認めることはできず、却つて……によれば、原告は被告共済会の借款を承認の下に入会の申込の事実を窺うことができるし、しかも、右借款第十六條第三号の規定の内容自体――原告のように会員の災害の際蒙る損害填補を主な目的とする法人においては会員が所定の会費の納入をしないときは直に法人の存立の基礎を危くするもので、会費納入懈怠に対する制裁を規定した本条項は重大な意義を持つものであること明である。――に徴し、例文であるという原告の主張は到底採用しがたい。
(以下略)